著者
竹田 美知 山下 美紀 大石 美佳 正保 正恵
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.43-58, 2015-03

本研究の目的は教育から労働への移行期である女子大学生を対象として、どのように将来のライフコースを設定しているか、将来のライフコースを設定するときに家族資本がどのように期待されているか、さらに社会的資本がどのように認知され期待されているかについて明らかにした。調査は、2012 年11 月から12 月に実施され、関東、関西、中国地区の女子大生を対象として無記名による自記式質問紙法により実施された。調査の結果、現在の両親の役割分担の現状が女子大生のライフコースに大きく影響をおよぼし、さらに「性別役割分業」に対する意識が将来のライフコースを規定していることが明らかになった。また、母の職業経歴は娘である女子大生の役割モデルとして捉えられており、理想のライフコースも母のライフコースを踏襲している。専業主婦コースを選択した群は家族内経済資源が裕福であるが、家族内社会関係資源である性別役割規範に将来のライフコースを縛られている。両立コースを選択した群は資格・技能といった個人資源を持つことを希望し、女性が働くことについて家族がサポートしており、家族外社会関係資源を豊富に持っていた。
著者
土肥 伊都子
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University : JOHS (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-23,

本研究の目的は、日本型家族への志向性を、心理的個人化の観点から検討することであった。そこで、在豪日本人にインタビュー調査を行い、日本型家族の特徴が表れると考えられる性別役割分業、子ども中心主義、家族内外の境界意識、夫婦の恋愛意識、ジェンダー・パーソナリティについて訊ねた。その結果、在豪日本人の日本型家族志向性は、豪での労働環境や社会保障制度などからの影響を多分に受けていることがわかった。豪では仕事より家庭生活が優先され、結婚の有無などによる社会的立場への影響は小さかったが、これが心理的個人化を促進し、家族ユニット志向を抑制することが示唆された。また、こうした家族内の心理は、個人のパーソナリティに対して、ジェンダーの影響を受けにくくしていると考察した。ただし、子ども中心や夫婦間の恋愛意識のなさは、家族ユニット志向に沿ったものとなっていた。